相続時精算課税制度の活用(暦年課税とのベストな組み合わせ)
相続時精算課税制度を選択すれば、暦年課税制度による相続税の節税はできなくなりますが、両制度を上手に組み合わせることで、さらに節税効果を上げることができます。
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相続時精算課税制度を選択した親以外から通常贈与してもらう
相続時精算課税制度は、親ごと、兄弟姉妹ごとに選択できるのがポイントです。たとえば、父親からの大型の贈与はすべて相続時精算課税制度を選択し、母親からは少額ずつ暦年課税制度でもらうという合わせ技が可能です。
相続時精算課税制度を選択すると、原則として相続時に持ち戻されて計算されるため、相続時精算課税制度の選択後は、その後の父親の財産を減少させる相続税対策がとれなくなります。しかし、母親からの贈与について通常贈与を選択しておけば、親の財産の合計額を減少させる相続税対策としての贈与は可能になります。
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相続時精算課税制度を選択した子や孫以外の親族に通常贈与する
父親や母親、祖父母からの贈与については相続時精算課税制度か暦年課税制度のどちらかを選択。それ以外の人は通常贈与のみで取り扱われるので、都合3つのパターンがあることになります。その中からベストな方法を選択しなければいけません。
親や祖父母からの贈与について相続時精算課税制度を選択した場合は、選択した親や祖父母のその後の相続税対策はできなくなります。ただし、その制度は兄弟姉妹が別々で選択できるので、たとえば相続時精算課税制度を選択した子ども以外の子や孫などへ贈与すれば、財産額を減らすことは可能です。
【重要】2024年制度改正による「合わせ技」の進化
上記の内容(相続時精算課税を選択すると、その親からの贈与では節税対策ができなくなる)は、2023年までの基本的な考え方でした。しかし、2024年(令和6年)1月1日以降の贈与からは、このルールが大きく変わり、両制度の併用(合わせ技)がさらに有利になっています。
最大の変更点は、相続時精算課税制度を選択した場合でも、新たに年間110万円の基礎控除(非課税枠)が設けられたことです。
これは、暦年課税制度の年間110万円の基礎控除とは「別枠」です。
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ポイント①:持ち戻しが不要 この新設された年間110万円までの贈与は、将来の相続時に相続財産へ持ち戻す必要がありません(※)。つまり、この枠内で行われた贈与は、そのまま純粋な節税対策となります。 (※2,500万円の特別控除とは別枠で、累計額にも加算されません)
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ポイント②:申告が簡便 年間の贈与額がこの基礎控除110万円以下であれば、贈与税の申告も原則不要となりました。
この改正により、以前の「相続時精算課税を選択した親の財産は、もう生前贈与で減らせない」という常識が覆りました。
進化した「合わせ技」の具体例
この改正を踏まえると、節税の選択肢は以下のようにさらに強力になります。
例:ある子(受贈者)が、両親から最大限の非課税贈与を受けるケース
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父親からの贈与:相続時精算課税制度を選択
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まとまった資金(例:住宅取得資金)が必要な場合、まず2,500万円の特別控除を利用して贈与を受ける。
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【ここが新しい】 その後も、父親からは毎年110万円まで、新設された基礎控除を使って贈与を受け続ける。この分は相続財産に持ち戻されないため、確実に父親の財産を減らす節税対策となります。
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母親からの贈与:暦年課税制度を継続
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母親からは、従来通り、暦年課税制度の基礎控除(年間110万円)を使って贈与を受ける。
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【結果】 この子は、「父親からの110万円(相続時精算課税の基礎控除)」と「母親からの110万円(暦年課税の基礎控除)」を両方とも非課税(かつ持ち戻し不要)で受け取れる可能性があります。つまり、年間で合計220万円まで、将来の相続税の課税対象から外しながら財産を移転できるのです。
さらなる節税戦略:財産の種類に着目する
「どの制度を使うか」だけでなく、「どの財産を贈与するか」も節税効果を左右する重要なポイントです。
1. 将来値上がりしそうな財産(株式・不動産など)
相続時精算課税制度の大きなメリットの一つに、相続時に持ち戻される際の財産評価額が「贈与時の時価」で固定されるという点があります(※新設の110万円基礎控除分を除く)。
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活用法: 将来的に価値が上がることが予想される財産(例:再開発エリアの土地、将来性のある非上場株式)を、価値が低いうちに相続時精算課税制度(2,500万円の特別控除枠内)で贈与します。
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効果: 将来、相続が発生した時にその財産の価値がどれだけ高騰していても、相続税の計算対象となるのは「贈与時」の低い評価額で済みます。もし暦年課税で少しずつ贈与していたり、相続まで待ったりした場合に比べて、大幅な節税が期待できます。
2. 収益を生む財産(賃貸アパート・配当株など)
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活用法: 家賃収入や配当金を生み出す財産を、相続時精算課税制度などを利用して早めに子や孫に贈与します。
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効果: 贈与が完了した瞬間から、その財産が生み出す収益(家賃、配当など)は、親ではなく子や孫のものです。これにより、親(贈与者)の手元にこれ以上財産が蓄積するのを防ぐことができます。 これは「財産そのものを減らす」直接的な節税だけでなく、「将来増えるはずだった財産を増やさない」という間接的ながら非常に強力な相続税対策(財産の「スライド効果」)となります。
まとめ:選択の重要性と注意点
このように、相続時精算課税制度と暦年課税制度は、どちらかが一方的に有利・不利というものではなく、それぞれの特性を理解し、組み合わせて使うことで真価を発揮します。
ただし、以下の点には十分な注意が必要です。
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不可逆性: 一度「相続時精算課税制度」を選択すると、その贈与者(例:父親)との間では、二度と「暦年課税制度」に戻ることはできません。
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暦年課税のルール変更: 暦年課税(通常贈与)についても、相続開始前の持ち戻し期間が「3年」から「7年」に延長されるなど、ルールが複雑化しています。
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小規模宅地等の特例: 相続時精算課税制度で贈与された土地は、原則として相続時に「小規模宅地等の特例」が使えなくなるなど、他の特例との兼ね合いも考慮する必要があります。
制度の選択は、ご家族の資産状況、将来のライフプラン、相続人(受贈者)の数などによって、何が「ベストな方法」かが全く異なります。最新の税制改正を踏まえ、最適なプランを実行するためにも、一度専門の税理士に相談されることを強くお勧めします。
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