【専門家が解説】土地の相続税評価はどう決まる?路線価・倍率方式を徹底解説
相続財産の中でも、特に評価が複雑で、金額も大きくなりがちなのが「土地」です。土地の評価を1円でも間違えれば、相続税額に大きな影響が出かねません。 この土地の相続税評価には、国が定めた明確なルールが存在します。それが**「路線価(ろせんか)方式」と「倍率(ばいりつ)方式」**です。 今回は、土地の相続税評価の基本から、これら2つの評価方法、そして評価する上での注意点まで、専門家が分かりやすく解説します。
土地の相続税評価の基本
まず、相続税を計算する上での土地評価の基本的な考え方を理解しておきましょう。普段耳にする「時価」や「固定資産税評価額」とは異なる、特別なものさしが使われます。
相続税評価額とは?「時価」との関係
相続税評価額とは、相続税を計算するためだけに用いられる土地の評価額のことです。 最も重要なポイントは、**「相続税評価額 ≠ 時価」**であるという点です。「時価」とは、実際に市場で売買される価格(実勢価格)を指しますが、相続税評価額はこれを直接使うわけではありません。
一般的に、相続税評価額は時価のおおむね80%程度の水準になるように設定されています。これは、売買のタイミングによって変動する時価をそのまま使うと納税者間の公平性が保てなくなるため、国が財産評価の基準を定めているからです。
固定資産税評価額との違いに注意
土地の評価額には、もう一つ**「固定資産税評価額」というものがあります。これは、毎年課税される固定資産税や、不動産を取得した際にかかる不動産取得税などの基準となる評価額です。 こちらは時価のおおむね70%程度**が目安とされており、相続税評価額とは目的も基準も異なります。納税通知書などに記載されている金額をそのまま相続税の計算に使えるわけではないので、注意が必要です。
路線価方式とは?
路線価方式は、主に市街地の土地評価に用いられる方法です。 国税庁が毎年7月頃に公表する**「路線価」**に基づいて計算します。路線価とは、道路(路線)に面する宅地1㎡あたりの評価額を千円単位で示したものです。
計算式は以下の通りです。
路線価 × 各種補正率 × 土地の面積(㎡) = 相続税評価額
各種補正率とは、土地の形(いびつな形をしていないか)や、角地か、道路にどう面しているかといった、個別の土地が持つ特徴を評価額に反映させるためのものです。例えば、きれいな長方形の土地よりも、使い勝手の悪いいびつな形(不整形地)の土地は評価が下がります。この補正率の適用が非常に専門的で複雑な部分です。
路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のウェブサイトで誰でも確認できます。
倍率方式とは?
倍率方式は、路線価が定められていない郊外や農村部などの土地評価に用いられる方法です。 路線価が設定されていない代わりに、その土地の固定資産税評価額を基準にして計算します。
計算式は非常にシンプルです。
固定資産税評価額 × 国税庁が定める倍率 = 相続税評価額
この倍率は、地域ごとに国税庁が定めており、路線価と同様に上記のウェブサイトで確認できます。「評価倍率表」という名称で公開されています。
路線価方式と倍率方式の違い・使い分け
この2つの方式は、納税者が自由に選べるわけではありません。どちらを使うかは、評価したい土地の場所によって自動的に決まります。
- 路線価が定められている地域 → 必ず「路線価方式」
- 路線価が定められていない地域 → 必ず「倍率方式」
つまり、土地を評価する際は、まず国税庁のサイトでその土地の住所を検索し、路線価図があるかないかを確認することから始まります。路線価図があれば路線価方式、なければ評価倍率表を探して倍率方式で評価する、という流れになります。
土地評価で注意すべきポイント
土地の評価額は、単純に計算式に当てはめるだけで終わらないケースが多々あります。評価額を正しく、そして有利に計算するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 土地の形状や利用状況による評価減 土地の評価額は、その土地が持つデメリットを反映して減額できる場合があります。例えば、前述のいびつな土地(不整形地)、道路に接していない無道路地、高低差のある崖地などは評価が下がります。
- 他人に貸している土地は評価が下がる 自分の土地をアパートの敷地として貸している(貸家建付地)場合や、土地そのものを他人に貸している(貸宅地)場合、所有者は土地を自由に使えないため、その分評価額が減額されます。
- 「小規模宅地等の特例」の活用 これが最も大きな節税ポイントです。亡くなった方が住んでいた自宅の土地や、事業をしていた土地については、一定の面積まで**評価額を最大80%も減額できる「小規模宅地等の特例」**という強力な制度があります。この特例が使えるかどうかで、相続税額がゼロになるケースも少なくありません。
- 土地の評価は、こうした様々な要因が絡み合うため、非常に専門的な知識が求められます。特に、補正率の計算や特例の適用判断は複雑です。相続財産に土地が含まれる場合は、必ず相続に強い税理士などの専門家に相談し、正確な評価を行うことを強くお勧めします。
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